税務
2025/06/25
うっかりミスが命取り?!源泉所得税の納付漏れと「不納付加算税」の恐ろしい関係

こんにちは!
名古屋の税理士 グロースリンク税理士法人 西條です。
経営者の皆様、日々の業務、本当にお疲れ様です。
今、私どもは、源泉所得税の納期の特例に関する業務の真っ最中です!
「源泉所得税」とは、会社が従業員に給与や賞与を支払う際、あるいは税理士や弁護士など個人事業主への報酬を支払う際に、その所得からあらかじめ所得税を差し引いて(源泉徴収して)国に納める税金のことです。
会社は、従業員や外部の個人事業主の代わりに税金を預かり、国に納める「納税義務者」としての役割を担っています。この預かった税金を、原則として給与等を支払った月の翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。
今回は、この源泉所得税の基本から、もし納付が遅れてしまった場合に課される「不納付加算税」という恐ろしいペナルティについて、具体的な事例を交えながら解説します。
1. そもそも「源泉所得税」とは?
1月に支払った給与・報酬にかかる源泉所得税は2月10日までに納付します。
あくまで「支払ったら」という事になるので、12月分1月支払いの給与は1月分として考えます。
その中でも「納期の特例」とは、
給与の支払いを受ける人が常時10人未満である事業者が届出を出すことで、
納付のタイミングを毎月から半年に一回とすることができるものです。
特例を適用すると、納付時期は以下のようになります。
1月から6月までの源泉所得税 → 7月10日までに納付
7月から12月までの源泉所得税 → 翌年1月20日までに納付
尚、納付期限が土日祝である場合は、翌平日が納付期限となります。
7月10日が土曜日だった場合、7月12日(月)までに納付すればOKです。
2. なぜ納付期限が重要なのか?遅れると何が起こる?
「たった数日なら大丈夫だろう」
「うっかり忘れてしまっただけなのに…」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、源泉所得税の納付期限は非常に厳格です。この期限を1日でも過ぎてしまうと、原則として「不納付加算税」というペナルティが一律に課されてしまいます。
3. 「不納付加算税」の具体的な金額と計算方法
では、具体的に「不納付加算税」はいくらくらいかかるのでしょうか?
不納付加算税の金額は、原則として納めるべき源泉所得税の額の10%です。
計算式:不納付加算税 = 納めるべき源泉所得税額 × 10%
ただし、納付が遅れた場合でも、自主的に納付した場合は5%に軽減されます。
【具体例で見てみよう】
例1:税務署からの指摘前
納めるべき源泉所得税額:10万円
納付期限が過ぎてしまったが、税務署から指摘を受ける前に自主的に納付した。
不納付加算税:10万円 × 5% = 5,000円
ポイント:自主的な納付であれば、特例により5%に軽減されます!
例2:税務署から指摘(告知)をされた後に納付した場合
納めるべき源泉所得税額:10万円
納付期限を過ぎた後、税務署から「まだ納付されていませんよ」という連絡(告知)を受けて納付した。
不納付加算税:10万円 × 10% = 10,000円
ポイント:指摘を受けてからの納付は税率が上がってしまいます!
例3:税務署から指摘(告知)をされた後に納付した場合(金額に端数がある場合)
納めるべき源泉所得税額:10万9千円
納付期限を過ぎた後、税務署から「まだ納付されていませんよ」という連絡(告知)を受けて納付した。
不納付加算税:10万円 × 10% = 10,000円 * 端数の9千円は切り捨ててから計算します。(国税通則法第百十八条の三)
このように、自主的に納付するか、税務署から指摘を受けてから納付するかで、課される税金が大きく変わってきます。
4. 不納付加算税が課されないケースもある?「正当な理由」とは
「どんな場合でも100%課税されてしまうの?」
というと、必ずしもそういう訳ではなく、不納付加算税が免除されるケースもあります。
①正当な理由がある場合
「正当な理由」がある場合は、不納付加算税が課されないことがあります。
例えば、災害や交通通信の途絶など、客観的に納付できない理由があった場合などです。
これは他の税金の場合も同様なのですが、こうした場合はできるだけ早く、管轄の税務署に相談されることをお勧めいたします。
他にも具体的な事例として、「税理士から報酬に対しての源泉徴収の必要はないと言われたが、それに対して疑義があり、税務署に照会したところ、納付の義務ありとなった場合」や、
「不動産業を営む事業者が、入居者が非居住者となった事で源泉徴収義務者となったが、入居者からの連絡が遅れてその事実を知らなかった場合」などがあげられます。
ただ、前者では、税務署に自ら照会して判明したというところがポイントになると思いますし、後者では、賃料の支払いの都度非居住者か否かを確認するという義務はなく、また、不動産賃貸業という入居者との接触が少ない事業だから、という理由もありますので、ケースバイケースになるかと思います。
単に、「うっかり忘れていただけ」「忙しかったから」、「税法への理解が不十分」といった個人的な理由は「正当な理由」には該当しませんのでご注意ください。
②納期限から1ヶ月以内に納付した場合において、過去1年間に期限後納付がない場合
うっかりだとしても、まだ希望はあります。
というのも、納付期限から1ヶ月以内に自主的に納付した場合は不納付加算税を徴収しないと定められているからです。(国税通則法第六十七条の三)
ただ、過去一年以内に納税の遅延があった場合などは、こちらで言う「納付する意思があった」と認められなくなってしまう為、注意が必要です。(国税通則法施行令第二十七条の二)
③加算税の金額が5千円未満であるとき
加算税の金額が5千円未満である場合には、不納付加算税は加算されません。(国税通則法第百十九条の三)
5. 延滞税にも注意!二重のペナルティを防ぐには
不納付加算税だけでなく、納付が遅れると、さらに「延滞税」も課される可能性があります。
延滞税は、納付期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて課される「利息」のようなものです。納付が遅れれば遅れるほど、この延滞税も膨らんでいきます。
つまり、納付が遅れると「不納付加算税」と「延滞税」の二重のペナルティが課される可能性があるのです。
納付期限の翌日から2か月を経過する日まで:年2.4%
(原則は年7.3%ですが、「延滞税特例基準割合+1%」と比較して低い方が適用されます。この期間の延滞税特例基準割合が1.4%であるため、1.4%+1%=2.4%が適用されます。)
納付期限の翌日から2か月を経過した日以後:年8.7%
(原則は年14.6%ですが、「延滞税特例基準割合+7.3%」と比較して低い方が適用されます。この期間の延滞税特例基準割合が1.4%であるため、1.4%+7.3%=8.7%が適用されます。)
こちらはこのコラム投稿現在の数字ですのが、この「延滞税特例基準割合」が変更になれば、延滞税計算も変わってきますので注意です。
「延滞税特例基準割合」は、銀行の金利相場を反映して決定しますので、毎年変動の可能性があります。
まとめ:源泉所得税は「確実な納付」が最重要!
源泉所得税の納付は、会社の信頼にも関わる重要な義務です。「うっかりミス」が、不納付加算税という大きな代償につながることをご理解いただけたでしょうか。
もし納付期限を過ぎてしまったことに気づいたら、税務署からの指摘を待たずに、すぐに自主的に納付しましょう。そうすることで、不納付加算税の税率を5%に軽減することができます。
日々の業務に追われる中で、税務の細部にまで目を配るのは大変なことです。しかし、このコラムが、皆様の会社経営における税務リスクの軽減に少しでもお役に立てれば幸いです。
もし、ご自身の会社で「もしかしたら納付漏れがあるかもしれない」「源泉所得税の計算が合っているか不安」といったお悩みがあれば、一人で抱え込まず、すぐに専門家である税理士にご相談ください。適切なアドバイスとサポートで、皆様の安心経営を応援いたします!
その他、ご不明な点があれば
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私が日頃おりますのがささしまライブ近くの名古屋事務所ですが、岡崎や大阪、東京亀戸にも事務所がございます。
遠隔地でもリモート対応可能です!
(参考URL)
国税通則法-e-GOV
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
国税通則法施行令-e-GOV
https://laws.e-gov.go.jp/law/337CO0000000135#Mp-Ch_6
源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)-国税庁
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/gensen/000703/01.htm
公表裁決事例集等の紹介>> 国税通則法関係 >> 認めた事例-国税不服裁判所
https://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0604020100.html
延滞税の割合-国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm