税務
2025/07/24
あの前澤氏も否認された——税務署が“形式”ではなく“中身”を見る理由

グロースリンク税理士法人 亀戸オフィス 所属税理士/林
① 帳簿や契約書が完璧でも、税務署には通じない
「契約書も作成済み」「税理士にも相談済み」——そんな“安心感”が、かえって危険な落とし穴になることがあります。
実際、元ZOZO社長・前澤友作氏の会社が、約4億円の申告漏れを国税当局から指摘されました。
理由は、「支出の実態が形式と異なっていた」ため。
これは中小企業にとっても、決して他人事ではない事例です。
② 何があった?前澤氏の申告漏れをざっくり解説
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前澤氏の会社は、子どもの母親の知人が経営する会社に対して、社債の利子として2億円超を支払い
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「利子」だから当然、損金(経費)処理
ところが国税局は、これを「実質的には贈与に近い」と判断。
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形式上は社債取引だったものの、中身が“経費”として妥当ではないと否認
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その結果、「申告漏れ」として是正を求められました
☑ 形式上の書類や処理が整っていても、“実態”が伴わなければ否認されるのです。
③ 税務署が見るのは“紙の体裁”ではなく“中身(実態)”
税務調査官の視点は、以下のような点に向けられています。
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契約と実態にズレはないか
└ 例:業務委託契約があるのに、実際には何も業務を行っていない -
取引関係に独立性があるか
└ 例:親族・知人との取引は金額の妥当性や成果物の有無を厳しく確認 -
資金の流れに不自然さはないか
└ 例:一度出金された資金が別ルートで戻ってくる“環流”パターン
さらに調査の際には、反面調査で従業員や取引先にヒアリングが入ることも。
実際に、他の創業メンバーの遺族にまで照会が及んだケースもありました。
④ 実務でよくある危ないケース
次のような経費処理には要注意です。
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「外注費」として処理したが、実質は家族への給与
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「業務委託契約書」はあるが、成果物や記録が一切存在しない
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「役員出張費」名目で、実際は家族旅行
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「社債の利子」だが、返済・受取とも親族内で完結
☑ 中小企業では、こうした**“つい甘くなる”処理**が目立ち、税務調査でも狙われやすい傾向があります。
⑤ 怖いのは「レピュテーションリスク(信用失墜)」
追徴課税や加算税の負担もさることながら、報道されるリスクも軽視できません。
一度「脱税」として認知されてしまうと、以下のような影響が出る可能性があります。
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取引先:「この会社、大丈夫なのか?」
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金融機関:「融資の継続、再検討が必要では?」
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採用活動:「応募が来ない」「内定辞退が相次ぐ」
☑ 税務否認は、経営者や企業の信用を一瞬で損なう可能性があります。
⑥ オーナー経営者が注意すべき3つのポイント
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「形式が整っている」だけで安心しない
→ 実際の取引実態が帳簿や契約と一致しているかを意識しましょう。 -
親族・知人との取引には特に慎重に
→ 金額の妥当性、業務内容、証拠資料(報告書・指示書・成果物等)の保存が重要です。 -
グレーな処理には早めに専門家の目を
→ 小さな疑問でも、「これって大丈夫ですか?」と早めに相談することで被害を最小限に。
⑦ まとめ:「バレなきゃ大丈夫」は、もう通用しない
税務署は「形式だけでごまかした取引」を見抜くプロです。
たとえ数百万円の支出でも、実態がなければ経費とは認められません。
そして今の時代、SNSや報道を通じて一気に信用を失う可能性も。
だからこそ、「ちゃんとやっている」ことを自ら証明できる経営が求められます。
セカンドオピニオンも大歓迎です
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