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税務

2024/05/15

お手軽な節税?の落とし穴

お手軽な節税?の落とし穴

税務チームの森山です。

決算間際に大きな金額を一気に経費化する方法というはないか?ということは多額の利益を計上している経営者であれば、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。この課題に対する解決策として紹介されているものに、「短期前払費用の特例」というものがあります。

費用は本来役務の提供を受けた時に費用に算入すべきもので、前払いをした場合でも同様の考え方をします。例えば2年分の家賃をまとめて支払った場合には24で割った金額を、毎月の費用にしていくことになります。一方、1年以内の前払であれば支払ったときに費用とすることもできます。これが短期前払費用の特例です。

 

~短期前払費用~

前払費用の額で、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、上記の「前払費用」にかかわらず、その支払時点で損金の額に算入することが認められます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm

 

この特例の適用にあたっての注意点は以下の通りです。

 

①支払った日から1年以内に提供を受けること

「支払った日から1年以内に提供を受ける」とありますので、以下のようなケースでは本特例の適用はできないことになります。

 ✕ 5年間の分の火災保険料の前払いをした場合

 ✕ 3月決算法人が3/20に5/1~翌年4/30までの家賃を払った場合

 

②役務に係るものであること(+その性質が等質・等量であること)

役務提供=サービスに対するものが対象となるのであって、物の販売については対象となりません。例えば雑誌の継続購読はこの特例の対象になりません。また等質・等量というのは、期間中に受けるサービスの内容が概ね一定であるということです。我々税理士法人への報酬を年払いしたときは、その内容は役務提供ではありますが、毎月の業務量がバラバラのため等質・等量に該当せず、特例の適用はできません。対象となる代表的なものは生損保保険料・地代家賃・リース料などに限られます。

 

③継続適用をすること

この特例を一度適用すると、次回以降の支払についても継続して適用することが要件となっています。以前、保険代理店から「生命保険料の月払い・年払いを年度によって切り替えて利益を調整する」と言った提案を受けているお客様がいらっしゃいました。しかしこのような処理をした場合には継続適用がされていないため、この特例の適用はできないことになります。

 

④事業年度内に支払いを完了させること

事業年度末が土日祝日となっていて支払いが翌期になってしまうなど、年度末に前払いをする場合は特に注意が必要です。

 

⑤収益の計上と対応させるものは対象外となる

借入金を預金、有価証券などに運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、たとえ1年以内の短期前払費用であっても、支払時点で損金の額に算入することは認められません。また、売上原価に計上されている工場の地代家賃は、売上との対応関係があるため税務調査で否認される可能性があります。ただしこれについては一定の解釈の余地があります。

 

⑥重要性の原則の範囲内であること

この特例は会計上の重要性の原則を税法上も認める趣旨となります。重要性の原則とは、簡単に言うと重要性の高いものは厳密な処理を行うが、低いものは簡便な処理をしても良いというものです。いくらからが重要性が低いのかという論点について解釈の余地はありますが、あまりにも高額の前払いは否認される可能性があると考えてください。過去に売上の10%相当の地代家賃の前払いをして否認された裁決事例もあります。また監査法人による監査を受けている法人は、税務調査での否認以前に、重要性の原則に照らして認められない可能性もあります。

 

まとめ

お手軽な節税方法として紹介されている手法ではありますが、私個人としてはあまりお勧めしておりません。理由としましては最初の1年目しかこの税金削減効果が受けられない点、そしてなにより資金の固定化がされてしまう点です。目の前の税金にばかり注目するあまり、前払いするお金を設備投資に回して利益を生み出す可能性や、株式や投資信託等に投資をすることによって複利効果が得られる可能性を無視してはいけないと考えています。むしろこの特例の真の価値は事務負担の軽減にあると思っています。毎月取り崩して費用化していくのは、なんだかんだ手間ではありますから。

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