税務
2026/10/18
遺贈について!相続や贈与と死因贈与の違いとともに徹底解説
財産を「誰に」「どう残すか」を考えたとき、必ずといっていいほど目にする言葉が「遺贈」です。
相続や贈与と似ているようで仕組みが異なり、遺贈について正しく理解しないまま遺言書を作成すると、思わぬトラブルにつながることもあります。
ここでは、遺贈の基本的な意味から、相続・贈与・死因贈与との違い、税金や手続きの流れまで、初めて調べる人にもわかりやすく整理して解説します。
遺贈とは?

遺贈は、遺言によって自分の財産を特定の人や団体に無償で譲り渡すことをいいます。
民法上の制度であり、法定相続人はもちろん、法定相続人以外の第三者や、法人や団体に対しても財産を渡せる点が大きな特徴です。
ここでは、遺贈の基本的な仕組みに焦点を当てて、基礎知識を解説します。
参照元:民法 | e-Gov 法令検索
「遺贈」の読み方は?
遺贈は「いぞう」と読みます。
似た言葉に「遺贈寄付(いぞうきふ)」がありますが、これは遺贈という仕組みを使って寄付を行うことを指します。意味や仕組みを混同しやすいため、まずはここで押さえておきましょう。
遺贈者と受遺者とは
財産を残す側、つまり遺言者を「遺贈者」と呼びます。一方、財産を受け取る側は「受遺者」と呼ばれます。
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項目 |
遺贈者 |
受遺者 |
|
意味 |
遺言によって財産を譲る人 |
遺言によって財産を受け取る人 |
|
立場 |
財産を渡す側 |
財産を受け取る側 |
|
誰が該当する? |
遺言を作成した本人 |
個人・法人など |
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ポイント |
遺言によって財産の承継方法を指定する |
遺贈によって財産を取得する |
参照元:
民法 第1012条(遺言執行者の権利義務)|Lawzilla(迷わない法令データベース)
民法 第1015条(遺言執行者の行為の効果)|Lawzilla(迷わない法令データベース)
受遺者には、個人だけでなく法人や団体も含まれるため、家族以外への財産承継を検討する場合にも、遺贈を幅広く活用できます。
なお、受遺者に財産を引き渡す義務を負う人を「遺贈義務者」といいます。遺贈義務者には、相続人や遺言執行者などが該当します。
誰に財産を残せる?
遺贈の対象は法定相続人に限られません。以下のような相手にも財産を残せます。
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対象 |
具体例 |
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法定相続人以外の個人 |
内縁の配偶者、お世話になった友人・知人、孫(代襲相続人でない場合) |
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法人・団体 |
学校法人、NPO法人、公益財団法人など |
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複数の相手 |
個人と団体への同時遺贈も可能 |
法定相続では、原則として法律で定められた相続人に財産が承継されます。
一方、遺贈であれば、法定相続人以外の個人や法人・団体など、本人の意思に沿って財産の承継先を指定できます。
相続・贈与・死因贈与の違い

「相続」「贈与」「死因贈与」「遺贈」は、いずれも財産が人から人へ移る仕組みですが、成立の要件や当事者の関係性が異なります。違いを整理すると、以下のとおりです。
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項目 |
相続 |
贈与 |
死因贈与 |
遺贈 |
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財産が移るタイミング |
死亡時 |
生前 |
死亡時 |
死亡時 |
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対象者 |
法定相続人など |
誰でも可 |
誰でも可 |
誰でも可 |
|
成立の方法 |
死亡により相続開始。遺言による相続分等の指定も可能 |
当事者間の合意 |
当事者間の合意 |
遺言による単独の意思表示 |
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相手の同意 |
不要 |
必要 |
必要 |
原則不要(放棄は可能) |
参照元:
民法 第964条【包括遺贈及び特定遺贈】 | クレアール司法書士講座
相続は、亡くなった人の財産を相続人が引き継ぐ制度です。法定相続では法律で定められた相続人が財産を承継するのに対し、遺言によって相続分や遺産分割の方法などを指定することもできます。
一方、贈与は、生前に当事者同士が合意することで財産を渡す契約です。死因贈与は贈与の一種で、贈与者の死亡によって効力が生じる点が特徴です。そのため、贈与者が生前に受贈者との間で契約を結んでおく必要があります。
遺贈は、受け取る側の同意がなくても、遺言者が遺言による単独の意思表示によって財産の承継先を指定できる点が大きな特徴です。契約ではなく単独行為であるため、遺言者は法定の方式に従って、遺言の内容を変更したり撤回したりできます。
包括遺贈と特定遺贈について
遺贈には大きく分けて「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。どちらを選ぶかによって、受遺者が負う権利や義務の範囲が変わってきます。
参照元:
民法 第990条【包括受遺者の権利義務】 | クレアール司法書士講座
包括遺贈とは?
包括遺贈は、遺言によって個々の財産を特定せず、遺産の全部または一定の割合をまとめて譲ることです。たとえば、「遺産の2分の1をAさんに遺贈する」と指定する方法が該当します。
包括受遺者は、原則として相続人と同一の権利義務を持つため、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も承継する点に注意が必要です。また、包括受遺者は包括遺贈を放棄することも可能です。
特定遺贈とは?
特定遺贈は、遺言によって特定の財産を指定して遺贈することです。たとえば、「Aさんに自宅を遺贈する」「Bさんに預金500万円を遺贈する」といった方法が該当します。
特定遺贈では、原則として遺産に含まれる借金などの債務を当然に引き継ぐことはありません。受遺者は、遺言の内容を確認したうえで、遺贈を受けるか、放棄するかを選択できます。
包括遺贈と特定遺贈の違い
包括遺贈と特定遺贈の違いは以下のとおりです。
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項目 |
包括遺贈 |
特定遺贈 |
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対象の指定方法 |
財産全体に対する割合で指定 |
特定の財産を個別に指定 |
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負債の承継 |
割合に応じて承継する |
原則として承継しない |
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相続人との関係 |
相続人と同一の権利義務を持つ |
指定された財産のみ受け取る |
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遺産分割協議への参加 |
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するため、遺産共有状態となる場合には、原則として遺産分割手続きに関与します。 |
原則として不要 |
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放棄の期限 |
自己のために包括遺贈があったことを知った時から3か月以内(相続の熟慮期間と同じ) |
一律の期限はない(ただし、利害関係人などから相当の期間を定めて、遺贈を承認するか放棄するかの回答を求められる場合があります) |
包括遺贈を受けた場合、相続人と同一の権利義務を持つため、他の相続人との遺産分割協議に加わる必要が生じることがあります。一方、特定遺贈では、指定された財産のみを取得するため、原則として遺産分割協議に参加する必要はありません。
特定の財産だけを受け取りたい場合は特定遺贈、財産全体に対する一定割合を受け取りたい場合は包括遺贈というように、目的に応じて使い分けることが重要です。
遺贈のメリット

ここでは、遺贈ならではのメリットを2つ解説します。
メリットを理解することで、自分にとって遺贈が最適かどうかを判断しやすくなるため、悩んでいる方はぜひ確認してみてください。
法定相続人以外にも財産を残せる
遺贈であれば、内縁の配偶者やお世話になった友人・知人など、法律上の相続人ではない人を受遺者に指定できます。相続では原則として法定相続人が財産を承継しますが、遺贈なら遺言によって自分の意思に沿った財産の承継が可能です。
ただし、遺留分を侵害すると、トラブルにつながる可能性があるため注意しましょう。
遺贈寄付によって団体や法人にも財産を渡せる
遺贈では、個人だけでなく、学校法人やNPO法人、公益財団法人などの団体・法人に財産を渡せます。
遺言によって財産を寄付することを「遺贈寄付」といい、自分が大切にしてきた財産を、社会貢献や特定の活動に役立ててもらえる点が特徴です。寄付先は遺言で指定できるため、将来の財産の使い道について、自分の意思を反映しやすくなります。
ただし、団体によって受け入れ可能な財産や手続きが異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
遺贈のデメリット
遺贈には、法定相続人以外にも財産を残せる一方で、注意すべきデメリットもあります。
遺贈による思わぬトラブルを防ぐためにも、事前にデメリットを把握しておきましょう。
遺留分をめぐってトラブルになる可能性がある
遺贈によって法定相続人以外に財産を渡す場合、遺留分をめぐって相続人とのトラブルにつながる可能性があります。遺留分は、一定の法定相続人に保障された最低限の遺産の取り分です。
遺贈によって遺留分が侵害された場合、遺留分権利者から金銭の支払いを請求されることがあります。とくに特定の人や団体に財産を集中させる場合は、遺留分を考慮して遺言の内容を決めるように意識しましょう。
借金などの負債を引き継ぐ場合がある
遺贈では、とくに包括遺贈の場合、借金などの負債を引き継ぐことがある点に注意が必要です。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つため、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も承継することになります。
なお、特定遺贈では、原則として指定された財産のみを取得するため、負債を当然に引き継ぐことはありません。遺贈を受ける際は、財産だけでなく負債の有無も確認しておきましょう。
遺贈にかかる税金

遺贈によって財産を取得すると、財産の種類や受遺者との関係によって税金がかかる場合があります。とくに、取得した財産に対する相続税や、不動産を受け取った場合の登録免許税・不動産取得税などは、事前に確認しておくと、実際に受け取れる金額を把握可能です。
ここでは、遺贈にかかる主な税金について解説します。
取得した財産に相続税がかかるケース
原則として、遺贈によって財産を取得した人も相続税の課税対象となります。相続や遺贈による取得財産等を基に計算した課税価格の合計額が、基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合、原則として相続税の申告が必要になります。
ただし、受遺者が被相続人の一親等の血族および配偶者以外の場合、原則として相続税額が2割加算される点には注意しましょう。相続税額は、受遺者が取得した財産だけでなく、遺産全体の課税価格などをもとに計算されることを意識することが大切です。
不動産の場合にかかる税金
不動産を遺贈で取得した場合、相続税に加えて以下のような税金がかかります。
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税金の種類 |
課税の有無 |
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登録免許税 |
課税される(受遺者が相続人の場合は原則0.4%、それ以外は原則2.0%) |
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不動産取得税 |
包括遺贈による不動産の取得は、受遺者が相続人か相続人以外かを問わず、原則として不動産取得税は非課税です。 また、相続人に対する特定遺贈も原則として非課税です。 一方、相続人以外の者が特定遺贈により不動産を取得した場合には、不動産取得税が課税されます。 |
参照元:
登録免許税は、受遺者が法定相続人であるかどうかによって税率が変わるため、事前に確認しておく必要があります。
手続き・流れ
遺贈を実現するための一般的な流れは、以下のとおりです。
- 財産の内容と承継先を整理する
- 遺言書を作成する
- 遺言執行者を指定しておく
- 遺言者の死亡後、遺言執行者や遺贈義務者が必要な手続きを進める
- 受遺者が遺贈を承認または放棄する
- 財産の名義変更や登記などの手続きを行う
遺言書の形式に不備があると、無効になるおそれがあります。そのため、不動産や多額の財産を扱う場合は、公正証書遺言を作成しておくと、遺言書の形式面での不備を防ぎやすく、手続きをスムーズに進めやすくなります。
遺贈と遺留分の関係
遺贈する際は、遺留分にも注意しましょう。遺贈によって遺留分が侵害されると、遺留分権利者から金銭の支払いを請求される可能性があります。
ここでは、遺留分の基本的な仕組みと、遺贈によって遺留分が侵害されるケースについて解説します。
遺留分とは?
遺留分は、一定の法定相続人に保障されている、最低限の遺産の取り分です。対象となるのは、原則として配偶者、子、直系尊属であり、兄弟姉妹には遺留分がありません。
遺言によって特定の人や団体に財産を集中して遺贈した場合でも、遺留分権利者は、遺留分を侵害された範囲について、一定額の金銭の支払いを請求できます。
遺留分を侵害するケース
遺贈によって遺留分を侵害する可能性があるケースには、特定の人や団体に財産を集中させる場合などがあります。そのため、遺留分を侵害された遺留分権利者は、受遺者などに対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
代表的なケースは以下のとおりです。
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ケース |
具体例 |
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法定相続人以外への遺贈 |
「全財産を友人Aに遺贈する」と指定する |
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団体への遺贈 |
「全財産をNPO法人に寄付する」と指定する |
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特定の相続人への集中 |
「長男に全財産を遺贈する」と指定する |
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高額な財産の遺贈 |
「自宅など大部分の財産を特定の人に遺贈する」と指定する |
このような遺贈によって遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
遺贈に関するよくある質問
ここでは、遺贈に関するよくある質問をQ&A方式で解説します。
不動産を取得した場合、登録免許税はかかりますか?
かかります。受遺者が相続人である場合は原則0.4%、相続人以外である場合は原則2.0%です。
遺贈寄付とは?寄付とは何が違いますか?
遺贈寄付は、遺言によって死後に財産をNPO法人や公益法人などへ寄付する仕組みです。生前に行う一般的な寄付とは異なり、生活資金を減らすことなく、亡くなった後に財産を社会貢献などに役立ててもらえる点が特徴です。
【まとめ】遺贈について理解し、自分の意思に沿った財産承継を検討しよう
遺贈は、法定相続人以外にも財産を残せる柔軟な制度であり、社会貢献としての遺贈寄付など、活用方法も広がっています。一方で、包括遺贈と特定遺贈の違い、遺留分とのバランス、相続税や登録免許税といった税金面など、押さえておくべきポイントも少なくありません。
財産の内容や承継先の希望を整理したうえで、専門家に相談しながら遺言書の作成を進めることが、望む形での財産承継につながります。
もし、遺贈をきっかけに相続に関する情報をよりチェックしたいと感じた方がいましたら、グロースリンクの公式ホームページをチェックしてみてはいかがでしょうか。
参照元一覧:
民法 第1012条(遺言執行者の権利義務)|Lawzilla(迷わない法令データベース)
民法 第1015条(遺言執行者の行為の効果)|Lawzilla(迷わない法令データベース)
民法 第964条【包括遺贈及び特定遺贈】 | クレアール司法書士講座
民法 第990条【包括受遺者の権利義務】 | クレアール司法書士講座
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監修者:鶴田 幸久 グロースリンクグループ 代表 / 税理士 専門は法人税務、事業承継、および経営改善支援。 グロースリンク税理士法人をはじめ、グロースリンクグループの代表として、中小企業の税務申告から事業承継、スタートアップ支援まで幅広く手掛ける。「経営者の第一の相談相手」として、財務基盤の強化や経営計画策定などの伴走型支援に尽力。 行政・地域企業との連携や経営者向けセミナーの講師、Webメディアでの執筆・監修活動を通じて、実務に役立つ税務・経営情報の普及に精力的に取り組んでいる。
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