税務
2026/10/20
会社設立時の株の取り扱いについて!株数の決め方から株式発行まで
会社設立時に決める株の取り扱いについて、専門家の目線から解説します。
会社を設立するときには、資本金の金額だけでなく「株式を何株発行するのか」「誰が何株を保有するのか」といった株式に関する事項も決めます。
決め方を理解しておかないと、株主の発言が強くなり、会社の運営が思わぬ方向に進む可能性があります。
会社設立時に決める株式とは?

株式とは、会社の出資者に対して発行する証券です。
株式会社を設立するときには、事業の拡大やスタートという目的のために、株式を発行し、出資者からお金を集め、出資の対価として株式を交付します。
株式を取得した人は株主と呼ばれます。株主は、株式取得割合に応じて株式総会での議決権行使、利益が出たときの配当金の受け取り、そして株式売却を行えます。
出資者を募集せずに株式会社を設立することも可能です。その場合、会社を設立する人がすべての株式を取得する形を取ります。
出資者に株式を交付すると資金を調達できますが、議決権行使によって会社経営に参画してくる可能性もあります。
株式会社と合同会社の違い

株式を発行できるのが株式会社、発行できないのが合同会社です。
株式会社は株式を発行し資金を集めることが可能で、資本所有者と会社経営者が違います。会社の経営者は、株主の集会である株主総会での選出で決められます。
合同会社は、2006年に設けられた比較的新しい会社形態です。出資者となるのは会社の経営者であり、出資した人物すべての会社の決定権があります。
会社設立で株について決める項目
株式会社を設立する場合、株式の発行が必要となりますが、発行するにはいくつか決めないといけないことがあります。
どんなことを決めるのか、項目ごとに見ていきましょう。
譲渡制限をつけるか
無断で株式の売買や譲渡を行えないようにするのが、譲渡制限です。
通常は株式の売買・譲渡を自由に行えますが、制限をつけると会社の承認がないとできません。そのため、基本的に理由がなければ、株式には譲渡制限をつけましょう。
制限をつける大きな理由として、会社として不本意な人物に株が渡るのを防ぐためです。制限をつけると、株の買い手を広く集めるのが難しくなりますが、会社設立したばかりのときは経営基盤を安定させることを優先しましょう。
もし譲渡制限を設ける場合、その旨を定款に記載しないといけません。
株価はいくらにするか
次に株価をいくらにするか決めます。
1円単位で端数をつけて株価として決めることも可能ですが、「株式数がわかりやすい」「資金調達しやすい」という点から、1000円または1万円の株価にすることをおすすめします。
例えば1万円の株価なら、100株なら100万円とわかりやすいです。そして、手頃な金額のため出資してもらいやすくなります。
10円や100円の株価でも出資してもらいやすいですが、株主が増えすぎる可能性があり株主の管理が大変になります。
そのため、資本金が1000万円未満だと1000円、1000万円以上だと1万円の株価にすることをおすすめします。
発行済株式数はどれぐらいにするか
会社が発行する株式数の発行済株式数も決めておきましょう。
発行済株式数は、1000株以上にするのをおすすめします。会社の株を51%以上取得している人物は、単独で取締役の解任や選任などの権利を有します。たとえば、発行済株式数が100株だとしましょう。この場合は、1株だけで取得割合が1%変動するので、持株比率が50%だった株主が1株さらに取得すると51%以上となります。そのため、ある株主の持株比率が51%以上になる可能性が増えて、会社が意図しない人物が取締役になる可能性が高まります。
発行可能株式総数について
会社が将来にわたって発行できる株式数の上限が「発行可能株式総数」です。
これは定款に記載する必要があり、この枠を超えて新株を発行したい場合は、株主総会の特別決議で定款を変更しなければなりません。非公開会社と公開会社では、総数についての決まりが違います。
譲渡制限あり(非公開会社)の場合
譲渡制限を設けている非公開会社の場合、発行可能株式総数に法令上の上限倍率制限はありません。そのため、設立時に発行する株式数(発行済株式数)の10倍〜100倍程度など、将来の増資予定に合わせて柔軟に枠を設定できます。
ただし、将来的に資本金が1億円を超えると、中小企業向けの優遇税制(法人税率の軽減や交際費の損金算入など)の対象外となります。そのため、「将来増資して事業を拡大する場合でも、まずは資本金1億円未満(あるいは9,000万円程度など)に抑えられる範囲」をひとつの目安として株式数を検討するのがおすすめです。
譲渡制限なし(公開会社)の場合
譲渡制限を設けない公開会社の場合は、会社法により「発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍を超えてはならない」と定められています。そのため、設立時は「発行済株式総数の4倍未満(最大で4倍まで)」の範囲内で設定する必要があります。設定した発行可能株式総数は、必ず定款に明記します。
持株比率について
会社設立時の発起人が複数人となる場合は、持株比率を決めましょう。
発行済株式総数に対する、株式の所有割合です。持株比率によって、以下のように保有する権利が変わります。
|
持株比率 |
主な権利内容 |
|
3分の2以上 |
株主総会の特別決議を単独で可決できる |
|
過半数 |
株主総会の普通決議を単独で可決できる |
|
3分の1以上 |
株主総会の特別決議の一部を単独で否決ができる |
|
3%以上 |
会計帳簿を閲覧・謄写できる |
|
1%以上 |
株主総会で議案を提出できる |
|
1株以上 |
株主総会などの議事録を閲覧できる |
そして、会社の代表者が3分の2以上の持株比率としましょう。
持株比率が3分の2以上だと、株主総会での特別決議を単独で可決でき、監査役の解任・定款の変更・M&A・増資・解散の議案を決議できます。
仮に、代表者ともう一人で会社を設立し、持株比率をそれぞれ50%ずつとします。50%の持株比率では、過半数の株式を持っていないので、二人の意見が一致しないとなにも決まりません。会社を運営する中で、二人の意見が常に同じということはないでしょう。もし二人の意見が対立した場合、会社の重要事項が何も決まらないという結果になり、会社経営に支障をきたします。
また、代表者が過半数の持株比率とするのもおすすめできません。この場合、もう一人が3分の1以上の持株比率となるため、単独で特別決議を否決できます。
そして、代表者の持株比率が3分の2ちょうどになる株数にするのもおすすめできません。会社を経営していく中で、弟や妻に事業に参加してほしいとなり、1株譲渡したいとなっても、代表者の持株比率が3分の2ぴったりの数だと、株式の調整が難しくなるからです。
代表者の持株比率は、発行済株式総数の3分の2よりも少し多めの数にすると良いでしょう。
株券は発行するのか?
株券は基本的に発行する必要はありません。
株券を発行すると、株券の消失リスク・株券譲渡で株式譲渡成立・発行や保管にお金がかかるなどのデメリットがあります。余計なトラブルを発生させないために、株券の発行は不要です。
株主総会について
会社の役員や利益について、株主が決めるための会議が株主総会です。
株主として権利を行使できる機会ですが、開催時期や開催場所などは会社ごとに違います。株主の出席の義務はなく、参加しなくても構いませんが、参加する場合は代理人を立てる場合もあります。
株主総会で決めること
株主総会で決めることは、取締役会設置会社と非設置会社で違います。
取締役会設置会社では、基本的に法律上で定められた事項に付いてのみ決定でき、それ以外の事項は取締役会に委ねられます。
株主総会で決めることは、以下の5つのカテゴリーの内容です。
- 役員等の選任・解任に関すること
- 会社の基礎的な変更に関すること
- 株主の重要な利益に関すること
- 株主の利益が害されるおそれが高いこと
- 定款で規定すること
役員では、取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選任と解任を決めます。ただし、代表取締役や重要な組織の設置は、取締役会で決定されます。
会社の基礎的な変更については、会社の事業譲渡や合併・分割・解散、そして定款の内容となります。
株主の重要な利益については、剰余金配当・株式併合等・資本金減少、株主の利益が害されるおそれが高いこととは、役員の報酬の決定についてを指します。
あわせて、定款で定めることや変更することも、株主総会で決めます。
なお、取締役会を設置していない非設置会社の場合、すべてのことを株主総会で決められます。
株主総会と取締役会の違い
株主で構成されるのが株主総会であり、取締役で構成されるのが取締役会です。
取締役会では会社の経営に関する方針や重要事項を決定し、代表取締役の業務執行を監督します。一方、株主総会には取締役の選任・解任や定款変更など、会社の根幹にかかわる事項や株主の利益に直結する決議権があります。
つまり、会社の根幹に関わる重要な決定や役員の人選は「株主総会」、日常的な業務執行や経営に関する決議は「取締役会(取締役)」が行うと言えます。
株価の具体的な決め方

株価は、いくつかの要因を考慮して決めます。
要素となるのは、資本金・会社の成長性・市場環境・競合他社・出資者です。株価の決め方にはいくつかの方法があります。
資本金ベースで決定
シンプルな方法が、資本金をもとに株価を決定する方法です。資本金を発行済株式総数で割って算出します。
たとえば、資本金1000万円で、1万株を発行する場合は1株あたりの株価は1000円です。スタートアップ企業や小規模企業でよく用いられる株価の算出方法であり、資本金に基づいた株価のために出資者の理解を得られやすくなります。
事業計画を基本に決定
将来的にな投資家の参入や資金調達(第三者割当増資など)を見込んでいる場合は、事業計画書を作成し、将来の成長性や見込み利益をもとに企業価値(バリュエーション)を試算して株価を決める方法もあります。
会社の将来的なキャッシュフローや収益性、競合優位性などを根拠に株価を設定することで、出資を検討する投資家に対して株価の正当性を説明できます。将来の資産価値や成長性が株価に反映されるため、魅力的で意欲的な出資者を集めやすくなるのがメリットです。
主にスタートアップ企業やベンチャー企業で用いられる方法です。なお、設立時の自己資金のみでスタートする一般的な中小企業の場合は、事業計画ベースではなく「資本金÷発行株式数」の資本金ベースでシンプルに算出するのが一般的です。
比較企業法を活用
同じ業界や類似する事業を行う企業の株価と比較して、自社の株価を算出する方法です。競合他社の株価や業績を参考に株価を決めるので、出資者が納得できる株価を提示できます。
例えば、競合他社の株価が100円なら、自社の株価も近い価格にします。ただし、他社と比較するなら単純に株価だけを見るのではなく、自社の将来性や特徴なども加味し慎重に決めないといけません。自社の株価を過小評価すると会社の価値が低いと見られ、過大評価すると出資者を集めにくくなるというリスクがあります。
会社設立での株についての注意点

会社設立時に安易に株価を決めると、あとからの株式取引や投資家との関係で問題が発生する可能性があります。
株価を高額にしない
会社を設立するときに、株価を高すぎる価格にはしないようにしましょう。
仮に株価を10万円とします。1株10万円だと出資しにくくなり、それならばと株価を半分の5万円で出資を募集したとしましょう。10万円で株価を取得した人は損する結果となり、さらに株価分割の手続きも必要です。
もしも株価が高額だと思うなら、分割できます。2株に分割すれば、株価は半分になりますが、最初に株を取得した株主の利益は変わりません。具体的に言うと、株価を10万円として分割して5万円ずつにして、再度出資者を募集したとしたら、以下のようになります。
- 株価10万円株を取得した人 : 5万円の株2つで10万円分の株
- 新しく株を取得する人 : 5万円の株1つで5万円分の株
このようになり、新しく株を取得する人は、2株購入したら10万円分となり、最初に10万円で株を取得した人と同じ株の利益を得られます。
議決権制限株式を活用する
株式には、いくつか種類があります。
会社に対しての出資者への株式には、議決権制限株式を割り当てることも可能です。この株式は名前のとおり、議決権を行使できない株式です。会社の発起人は、自社の経営権を守りながら出資を得られます。同時に、出資者に対しては剰余金配当優先株式も割り当てることができます。会社の利益を配当するときに、普通株式よりも優先して一定の配当を受け取れる株式種類であり、議決権がない出資者でも議決権制限株式を受け入れてくれるでしょう。
発行可能株式総数の変更は手間がかかる
発行可能株式総数は、会社によっては上限があり、総数を変えるには手間がかかります。
公開会社は株式発行数に上限がある
株式の譲渡制限を設けない「公開会社」の場合、定款で定める「発行可能株式総数」は、設立時に発行する「発行済株式総数」の4倍を超えてはならない(最大4倍まで)と会社法で定められています。
公開会社では、株主総会を開かずに「取締役会の決議のみ」で機動的に新株を発行して資金調達を行えます。しかし、いくらでも新株を発行できると、既存株主の持株比率が低下し、不利益を被る恐れがあります。そのため、取締役会の権限乱用を防ぎ、既存株主の権利を守る目的で4倍という上限が設けられています。
一方、すべての株式に譲渡制限を設ける「非公開会社(株式譲渡制限会社)」の場合は、このような4倍ルールの制限はなく、発行可能株式総数を自由に設定できます。
会社設立で株について迷ったら専門家に相談しよう

会社を設立するときに、株式についても決めることは多いです。
今回説明したように、株価の他にも株式の種類や発行可能株式総数などを決めないといけません。
初めて会社を設立するときには、株式についてわからないことがいくつも発生するでしょう。
グロースリンク税理士法人では、会社設立での株式についてのサポートを行っています。
ぜひお気軽にご相談ください。
■事業案内はこちら:https://www.tsurutax.com/#topbusiness
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監修者:鶴田 幸久 グロースリンクグループ 代表 / 税理士 専門は法人税務、事業承継、および経営改善支援。 グロースリンク税理士法人をはじめ、グロースリンクグループの代表として、中小企業の税務申告から事業承継、スタートアップ支援まで幅広く手掛ける。「経営者の第一の相談相手」として、財務基盤の強化や経営計画策定などの伴走型支援に尽力。 行政・地域企業との連携や経営者向けセミナーの講師、Webメディアでの執筆・監修活動を通じて、実務に役立つ税務・経営情報の普及に精力的に取り組んでいる。
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